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2026年メガスポーツイベントのサステナビリティ推進概観(前編)

遅ればせながら、新年おめでとうございます。今年も宜しくお願いいたします。

メガスポーツイベントが盛りだくさんに予定されている2026年が、世界を揺るがす衝撃的な出来事で始まったことは、不安や懸念を助長させますが、まずは、今年開催されるメガスポーツイベントのサステナビリティ推進についての簡単なご紹介からスタートいたします。

それぞれの大会の公開情報を、A:イニシアティブ設計の特徴、B:注力分野と気候変動対応の状況、という2つの切り口から、公式サイト上の情報限定で要点を抜粋してご紹介できればと思います。

前編では、年度内に開催予定の、2つの大会についてまとめます。 

1)ミラノ・コルティナ冬季オリンピック大会(2月6日から22日まで(パラは3月6日~15日))

90カ国以上が参加して史上初の広域開催で8競技116種目が実施される大会の開催まで3週間を切り、ムードも盛り上がってきています。施設の完成状況や選手登録など、様々な課題も露呈されていますが、サステナビリティ推進については、トップリーダーもサステナビリティ責任者もコミットを公言しており、マインドは高いレベルのように感じます。

【イニシアティブ設計の特徴】

公式サイト上には、『Sustainability Now26』というイニシアティブを掲げ、”Protecting Now”、”Renewing Now”、”Including Now”、”Moving Now”、”Empowering Now”と、「Now」という強い呼びかけの言葉を使って統一感のあるフレーズで構成される各分野へのアプローチが展開されるようです。CSR分野の聞きなれたキーワードではなく、具体的な行動を表す動詞を活用した呼びかけは、独自性があって印象的で、少し大げさな言い方になりますが、このデザインにイタリアの芸術性も感じます。

【注力分野と気候変動対応】

環境問題関連では、”Protecting Now” で主に気候変動対応(すべての運営を再エネ100%で稼働)、”Renewing Now”でリソース利用の削減と効率化に注力、”Including Now”でいわゆるDEIの活動(人権、ジェンダー平等、障がい者雇用と差別や虐待の撤廃)をカバーしています。

英語的には少しわかりにくにのが”Moving Now”ですが、いわゆる運動の促進で、若者や様々な人々のスポーツへのアクセスを改善し、より多くの人が健康的なライフスタイルを送ることができるように、ということのようです。

“Empowering Now”には、オリンピック大会の伝統的な価値でもある地域の経済発展も含まれ、新たな社会インフラや雇用の機会、さらにはサステナビリティに準拠したツーリズムの訴求まで、より多くの人々に恩恵をもたらすことを掲げています。

昨年10月にロンドンで開催された国連とIOCが連携実施するSport Positive Summit にも登壇されたサステナビリティ責任者のグロリア・ザヴァッタ(Gloria Zavatta)氏によると、開催地立候補の段階から気候変動問題を重視し、環境不可をできるだけ抑えるよう配慮していたとのこと、大会後にはオフセットも実施する予定だそうです。大会使用施設の85%が既存ですが、各施設にある既存人工降雪機に最新技術を活用することで、30〜50%程度の水や燃料を削減、電力は全て再生可能エネルギー運営するとのこと。期間中も指定エリア内での観客の車移動は禁止され、また公共交通機関の運行も効率化し、過去大会比で規模を20%縮小できるようです。

大会主催者であるIOCは、国連と連携し2018年末に「スポーツ気候行動枠組み」を立ち上げ、世界のスポーツ団体と連帯して気候変動問題に精力的に取り組んていますが(国際機関の中でも表彰されるレベル)、冬季オリンピック大会は、とくに気候変動の影響が出やすい大会でもあります。その運営の難しさにうまく対処し、有意義な大会になること、また日本人選手のご活躍を祈っています。

参照サイト:https://www.olympics.com/en/milano-cortina-2026/about-us/sustainability-now26

2)World Baseball Classic(3月5日~17日)

昨年のMLB東京ゲームズに続き、今年も日本での注目度が高い World Baseball Classic は、今年20年目を迎え、20の国と地域が参加イベントですが、残念ながら、現状は以下の通りです。

【イニシアティブ設計の特徴】情報記載なし

【注力分野と気候変動対応】情報記載なし

救いは、主催者であるWBSC(世界野球ソフトボール連盟)が、昨年末にサスティナビリティ施策を強化したことで、気候変動対応も指針に明記されていることです。COP30での国連スポーツ気候行動枠組み署名団体共同声明にも、会長からのコミットメッセージは出ていましたが、現場への落とし込みが全くできていない状況は、この大会が生み出す感動や笑顔の価値を半減させてしまうという印象も与えてしまいます。

オリンピックやワールドカップに比べて小規模とはいえ、世界的にも”儲けている”スポーツとしての社会的責任が十分に果たされていない状況は、一刻も早く改善されるとよいと思います。実は私は、初回大会開催時にニューヨークに滞在しており、少し運営のお手伝いをさせて頂いた経験もあり所縁のある大会なので、個人的にも切に願います。

日本人選手のMLB移籍がいくつか発表されてすぐの大会となりますが、日本が感動的な優勝を果たした先回大会に続き、今大会でも日本代表チームのご活躍を祈っています。

以上、トリノコルティナ冬季オリンピック大会とWorld Baseball Classic のサスティナビリティ推進について簡単にまとめましたが、いかがでしょうか。

サステナビリティ推進は完璧を目指す性質のものではなく、目標やアプローチも各組織や大会により様々ですので、全体のデザインと注力分野にのみ注目してみました。気候変動対応がきちんとなされているか、がまず大事(前提)という点は、世界では「13番なきSDGsはSDGsにあらず」と言われていますので、再度ご認識頂ければと思います。

これはあくまで設計図ですので(でも設計「が」大事)、各大会の実際の活動やインパクトなどについては、追って具体例とともにご紹介できればと思いますが、プロスポーツ等のオールスターゲームや注目イベント等についても、別途ご紹介していく予定です。

深堀り解説については、弊社が主催する「スポーツx社会貢献をデザインする」について”世界基準&日本目線”でビジネス視点から学ぶ個人向け会員制勉強会『Sports Purpose Club』にて提供します。ご興味のある方は、是非ご加入ください。

来月は、いろいろと話題の多いFIFAワールドカップと、FIBA女子ワールドカップ、そしてアジア大会のサスティナビリティ推進について、要点をまとめたいと思います。

メガスポーツイベント盛りだくさんな2026年が、皆さんにとって有意義な1年となりますよう祈念しております。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

執筆:梶川三枝(株式会社 Cheer Blossom 代表取締役)


「スポーツx社会貢献をデザインする」について”世界基準&日本目線”でビジネス視点から学ぶ個人向け会員制勉強会『Sports Purpose Club』は、キュレーターを務める弊社代表の梶川三枝が、世界最高峰プロリーグ現場での実務経験と、BBC Green Sport Awards/ Sport Positive Awards での審査員やFIBA財団アドバイザーを務める等グローバルスポーツ界最先端のサステナビリティコミュニティでの実績・人脈からの学びを会員限定で共有、今後重視される分野の良質な情報に触れながらセンスを磨く機会とともに同志とつながる場を定期的に提供しています。

プログラム概要:https://responsibility.cheerblossom.com/sportspurposeclub

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