つい先日年が明けたと思っていたら、あっという間に1月が終わり、先月サステナビリティ活動をご紹介したミラノコルティナ冬季オリンピック大会もいよいよ今週金曜に開幕です。
3月の World Baseball Classic については、様々な話題で盛り上がっていますが、今月のコラムでは、6月~7月に開催されるFIFAワールドカップと、9月に国内で開催されるアジア大会のサスティナビリティ推進について簡単にご紹介します。
先月同様、それぞれの大会の公開情報を、A:イニシアティブ設計の特徴、B:注力分野と気候変動対応の状況、という2つの切り口から、公式サイト上の情報限定で要点を抜粋してご紹介できればと思います。
1)FIFAワールドカップ2026(6月11日から7月19日まで)
史上初めての3か国開催となり(アメリカ、メキシコ、カナダ)、16都市で史上最多の48チームが参加して実施される世界最大スポーツイベントのひとつですが、今から楽しみにしていらっしゃるサッカーファンの方も多いのではないでしょうか。
開催前から、「史上最も環境に負荷を与えるスポーツ大会」と批判されたり、またトランプ政権下でのセキュリティ不安により米国での試合観戦を控える発言が元FIFA担当弁護士から出され、それに元FIFA会長が賛同するなど、すでに多方面で物議をかもしています。
また、先回2022年大会では、FIFAが大会を「カーボンニュートラルな大会」と発したことから、訴訟にまで至ったグリーンウォッシュ事件が発生し、「FIFAがオウンゴールを喫した」と揶揄されるまでの事態を経ての今回、FIFAがどのような対策を講じてくるのか、注目が集まっています。
今回コラムでは、あくまでFIFAが公式サイト上で発信している内容に限定し、簡単にご紹介します。
【イニシアティブ設計の特徴】
とくにファンを巻き込みやすくする仕掛けとしての特別な呼称はなく、シンプルに「FIFA World Cup 26 Sustainability & Human Rights Strategy(FIFAワールドカップ2026大会サステナビリティと人権戦略)」と記載されており、大会前、大会期間中、大会後の3つの「Phase(段階)」と、Social(人道支援)、Environmental(環境)、Economic(経済発展)、Governance(ガバナンス)という 4つの「Scope(活動領域)」から構成されるシンプルな設計で、主催者(FIFA)と開催都市が連帯して取り組む構図になっています。
いわゆるESGに、経済が追加で入っているのは、もともとの米国文化(商業主義)の影響と某大統領への忖度も入っているようにも感じますが、今回の大会の特徴的な点かもしれません。3か国16都市開催ということで、地域の事情に合わせるといっても、相当な数で(米国といっても都市により課題は様々)、主催者としては、ヴィジョンと理念を示し、これくらいざっくりな枠組みをつくるくらいしかできない状況なのかもしれませんが、サステナビリティに配慮した国際基準であるISO20121等にも準拠し、SDGsにも貢献することを視野に入れているとのことで、包括的な視野で戦略設計がされていることは理解できます。
以上が、主催者側(FIFA)が策定した戦略のフレームワークで、開催都市では、「人権」と「環境問題」という2本の柱で活動が展開されるようです。
【注力分野と気候変動対応】
A: 環境問題
各開催都市は、スタジアムと連携して環境に配慮した大会運営計画を策定遂行することが必須とされており、その計画はFIFA基準を満たしていることが条件とされているようです。
「気候変動」もカバーしてはいますが、やはり前大会でのグリーンウォッシュ事件を受けてか、過度にアピールはせず、粛々と計測削減する、という控えめな記載に留まっています。この点は、前大会と大きく異なる点ですが、とくにCO2排出による環境負荷が非難の的となっているなかで、その対応は世界スポーツ界でも注目されています。
B: 人権
各開催都市は、各都市のステークホルダーや地域社会と連携し、FIFAワールドカップ2026大会人権アクションプランを策定することが義務付けられ、開催都市選考プロセスで策定した当初の企画を増強して実行することが求められている、とのこと。そのための参考資料として、人権対応施策用の枠組み「FIFA World Cup 26 Human Rights Framework 」が提供されています。
現時点でご紹介しているのは、あくまで、いわゆる”絵にかいたもち”ですので、実際の活動には期待したいところです。
参照サイト:https://inside.fifa.com/tournament-organisation/world-cup-2026-sustainability-strategy
※サステナビリティ関連情報は、大会サイトにはなく、FIFAの公式サイト内に大会独自のサスティナビリティ推進戦略として記載されています。
2)アジア大会(9月19日から10月4日まで@名古屋)
アジア大会(正式名称:2026年アジア競技大会)は、オリンピックの各大陸版という位置づけで、実はスポーツ界での重要度に比し世間での認知度は低めな大会という印象ですが、94年の広島大会以来、32年ぶりの国内開催となりますので、盛り上がって欲しいですね。
【イニシアティブ設計の特徴】
活動の軸としては、SDGsを中心に据え、「ソーシャルグッドな大会の実現~Beyond Aichi-Nagoya 2026 アジアと未来への架け橋~」と呼びかけながら、既存施設の活用や資材の効率的な活用、またリサイクルメダルプロジェクトなど、個々の活動について簡単に紹介されている程度で、とくにイニシアティブ等はなさそうです。
イニシアティブや枠組みがあった方が、統一感があり、コミットも感じられて、活動の効率的かつ効果的な推進ができると思いますが、配慮はしています、という点は、なんとなくは伝わってはきます。
が、決定的にNGなのは、「SDG13:気候変動対策」が完全に抜け落ちている点です。「スポーツ気候行動枠組み」を国連とともに立ち上げリードしているIOCの傘下団体OCA(アジアオリンピック評議会)が主催なのに、この状態が許されるのか、といったレベルの驚きですが、まだ開催まで少し時間があるので、対応に期待したいと思います。
【注力分野と気候変動対応】
上述の通り、気候変動対応としてのCO2排出量計測に関する記載は一切ありませんが、「環境にやさしい」活動はいくつか紹介されています。
見た目からは、課題を能動的に抽出して対応するための対策を講じる、というプロセスよりは、「とりあえずできることから」始め、無理なくできそうなことを羅列してSDGsから当てはまるものを選んで並べておく、というよくあるパターンに陥っているように感じますが、パリ2024が世界に放ったパワフルなメッセージとまではいかないまでも、アジアでのリーダーシップを提示できるようなプレゼンスを、サステナビリティ領域でもできるとよいと思います。
参照サイト:https://www.aichi-nagoya2026.org/tournament/sdgs
以上、いかがでしたか?
スポーツが人々に勇気を与え、社会を活気づけるために大切な存在であり続けるために、守るべきルールは日々進化しています。タイムリーに情勢をキャッチアップし、活動をうまくデザインできれば、「スポーツの力」の威力は倍増します。ただ実施することも大切ですが、戦略的設計(デザイン)の重要性についても、是非考えてみてください。
詳細の解説は、「スポーツx社会貢献をデザインする」を”世界基準&日本目線”でビジネス視点から学ぶ個人向け会員制勉強会 Sports Purpose Club でお届けします。ご興味のある方は、是非ご参加ください。
執筆:梶川三枝(株式会社 Cheer Blossom 代表取締役)

「スポーツx社会貢献をデザインする」について”世界基準&日本目線”でビジネス視点から学ぶ個人向け会員制勉強会『Sports Purpose Club』は、キュレーターを務める弊社代表の梶川三枝が、世界最高峰プロリーグ現場での実務経験と、BBC Green Sport Awards/ Sport Positive Awards での審査員やFIBA財団アドバイザーを務める等グローバルスポーツ界最先端のサステナビリティコミュニティでの実績・人脈からの学びを会員限定で共有、今後重視される分野の良質な情報に触れながらセンスを磨く機会とともに同志とつながる場を定期的に提供しています。
プログラム概要:https://responsibility.cheerblossom.com/sportspurposeclub









