SDGsブームで多くのプロスポーツクラブがSDGsに取り組み、社会課題の改善に向けて取り組んでいることは素晴らしいと思います。
弊社は経営戦略としての社会的責任活動の設計導入を支援していますが、その専門的視点から、今後より多くのクラブが、同じ社会貢献活動でも、デザイン的に整った、より効率的に地域に貢献し、且つ社会的インパクトや事業成長につながる活動を展開できるよう、5つのNGポイントを提示したいと思います。活動を設計する際に、是非参考にしてみてください。
1)とりあえず海外支援
昭和の時代は、海外支援が社会貢献、という時代もたしかにありました。でも、スポーツクラブが果たすべき社会的責任は、世界ではなく、自社マーケットである地域社会にあります。海外支援というと、「わかりやすさ」はあると思いますが、本来の社会的責任活動の範疇ではありません。もちろん、事業戦略として、海外進出を狙っているクラブについては、この限りではなく、むしろ新規マーケット開拓の手法として大いに活用すべきですが、国内のみをマーケットとするクラブに関しては、基本的には必要ありません。
2)海外事例のコピペ
先進的な海外の事例を取り入れることは、よいことでお勧めではありますが、そのままコピペするのはやめましょう。結果としてそうなったとしても、自社マーケットに合うものかどうかの検証はすべきです。理想としては、ファンの意識調査などのリサーチデータもあるとよいですが、そこまで準備できるクラブは実態としてまだ少ないと思いますので、現状分析だけでもよいと思います。
よく考えてみて頂きたいことは、欧米は進んでいる、とよく言いますが、彼らは、自社マーケットと真摯に対峙し、自分たちで真剣に考える、というプロセスを必ず経ています。とくに学ぶべきは、ファンを大切にする姿勢であり、活動そのものではありません。見習うべきポイントを間違えないようにしましょう。
3)自分たちがやりたいことをやる
自分たちで考えたらいいじゃないか、というご意見もあるかと思いますが、これもNGです。なぜなら、「マーケットを理解する」ことが先決だからです。マーケット(ファン)のニーズも把握せずに、自分たちが何をやりたいか、を考えるのは、プロの仕事ではありません。マーケット(地域社会)の課題に真摯に向き合いましょう。
4)なんとなく話題になっていることをやる
日本は世界の他の国々に比べれば、同質性が高いということはできると思います。しかし、テレビや新聞、ネット等で出ているニュースだけでは、それが本当に自社が優先度をもって取り組むべき課題であるかどうかを確定させることはできません。他の課題も検証し、総合的に判断して、ポートフォリオを最適化することが重要です。
5)企業とだけ組む
これは、最もありがちなパターンだと思います。「スポーツの力」を最大限に活用して社会的責任活動を推進するためには、地域の優良NPOとの連携が不可欠です。ただこれは、日本のプロスポーツクラブにとっては少しハードルが高いです。なぜなら、日本は欧米と比べてまだ優良NPOの数がそれほど多くなく、とくに地方となると、選定が難しい実態があります。また、クラブ側にも、優良NPOを選定するスキルセットが整っていません。結果として、予算を出してくれる企業とだけ組む、という流れが主流になっており、この点に最も課題があると私は感じています。この点は、弊社クライアントの活動設計の際に最もニーズが高かった部分ですが、最近はNPOも増えてきていますし、今後もっとNPOとの良質な連携が増えてくるとよいと思います。
いかがでしたか?上記の5つのポイントを押さえて頂ければ、よりデザイン性の高い活動になり、効率的にさまざまな成果につなげることができると思いますので、頑張ってください!