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「スポーツの社会的責任」ってどれくらい重い?~Liability と Responsibility~

 しばらくお休みしていた弊社ブログを今年度から再開します。いろいろ反響もいただいていながら、お待たせしてしてしまいましたが、また現場のご参考になるような内容を発信していければと思いますので、宜しくお願いいたします。

 再開初回は、まず基本的な「社会的責任」という言葉について触れたいと思います。

 しばらく続いていた ”SDGsブーム” が一旦の盛り上がりを過ぎて、ようやく本質的なSR(社会的責任)マインド醸成の機運も整ってきた感がありますが、弊社事業で展開しており、(一部の優秀な)プロクラブの現場で使われている「社会的責任」という言葉は、日本語で聞くと、やや重圧感があるかもしれません。

 でも、英語での「責任」という言葉は、”liability” と”responsibiilty” の二つがあり、弊社事業の文脈で使う「社会的責任」は、後者の “responsibility” に該当します。このコラムは英語の勉強をするためのものではありませんので(笑)、文例などの解説はしませんが、二つの英語のワードの違いとして、”liability” にはその責任を果たせなかった場合のペナルティ(罰則)が発生するのに対し、”responsibiilty”には同様の罰則はない、という点をまず押さえておいて頂ければと思います。

 つまり、「真摯に向き合う必要はあるが、構えすぎない」ことが大事で、それが今日お伝えしたいメッセージです。私はよく略して「SR」と表現しますが、”Social Responsibility” という言葉は、欧米スポーツ界ではよく聞く重要キーワードです。実質的には、B to B 文脈での威力大ですが、コミュニティでのプロスポーツの存在意義を示すために必須のマインドです。

 日本では、「社会課題の解決」という表現があり、近い意味のことだと理解していますが、決定的に違うのは、同じ「社会課題の解決」というアクションをとるとしても、自発的な「社会的責任マインド」があるリーグやクラブは、地域のリーダーとしての存在意義を提示できるようになる、という点です。それがないと、ハブとしてしか機能せず(それはそれで素晴らしいことですが)、ワンランクアップして、地域のリーダーとしての信頼感までたどり着くことができるとよいと思います。

 また、「社会課題」というと、少子化や地方創生といったマクロ経済的観点からの課題が多く扱われるような印象で、もちろんそれも大切ですが、「社会問題」と称される地域で本当に困っている人々や気候変動、ジェンダー平等といった、一見対応方が難しそうなコーズからも逃げずに対峙する姿勢に価値があります。

 どのコーズにどれくらい注力するべきか、については、それぞれの地域が抱える課題やマーケットの特性を加味して設計していく必要がありますので、一概には言えないのですが、例えば、SDGsでいえば、13番の気候変動は、「前提」と認識される最重要課題ですし、日本で5番のジェンダー平等を外すのはマーケット状況の認識と判断に問題があると理解されるでしょう。また、リーグ・クラブとしての経営力や人気が高いほど、期待される「社会的責任」のレベルも高くなる、と考えるのが妥当でしょう。

 罰則のない責任でも、それを自ら背負い、一筋縄でいかない社会問題にも挑み、よりよい未来づくりのための努力をオフコートでも欠かさない。そんな姿が、ファンや地域社会を魅了し、信頼につながるのです。

(文:梶川三枝)

 

 

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