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世界の超一流選手が声をあげ、ともに立ち向かう社会問題とは

東京オリンピック・パラリンピック大会までいよいよ1年をきり、ますますスポーツへの注目が集まるなか、「スポーツの社会的責任」と向き合うコラム「責任ある熱狂~Responsibly Fanatic~」の初回記事として、弊社が企画をサポートしている非営利団体 Sport For Smile が東京オリパラ大会に向けて海外のNGOと連携して実施していくプロジェクト(ソーシャル・キャンペーン)についてご紹介したいと思います。

“It’s a Penalty” (IAP)というメガスポーツイベントに特化した「子どもを虐待・搾取・人身取引から守る」キャンペーンで、2014年のブラジルでのFIFAワールドカップから始まり、オリパラ大会では、リオと平昌の2大会で、IOCの賛同のもと各組織委員会とも連携して実施されてきました。NFL(米アメリカンフットボール)の冠イベントであるスーパーボウルでは、賛同したボランティアの協力により、18名の行方不明の子ども達を保護した実績もあります。

おそらく日本の多くの方にとっては、あまり馴染みがないかと思いますが、実は、皆さんもよくご存知の超有名アスリートたちが賛同し協力している活動で、陸上のウサイン・ボルト氏やキャシー・フリーマン氏(アテネ五輪の最終聖火ランナー)、映画『インビクタス』主人公モデルとなったフランソワ・ピナール氏や元ブラジル代表サッカー選手ダビッド・ルイス氏、パラリンピック・金メダリスト、そして元NFL選手など、錚々たるアスリートがPVで呼びかけて、「虐待・搾取・人身取引」といった ”犯罪” の兆候についてスポーツファンや市民を啓発し、通報アクションを喚起する、というものです。

ILO(国際労働機関)の発表によると、現在世界で人身売買(現代奴隷)の被害者数は、毎年2490万人にも達し、そのうち子どもは550万人もいるそうです。そして、メガスポーツイベント開催時において、子どもたちが人身売買の被害者となるリスクが高まるというリサーチ結果もあります(スコットランド・ダンディー大学)。IAPはこのような状況を受けて、立ち上がったプロジェクトです。

2016年のリオ五輪では、IOCが子どもの保護をサステナビリティ・プログラムの重要項目として掲げたことから、リオ大会組織委員会のレガシー・プログラムの一環として実施された経緯がありますが、組織委員会のコミュニケーション&エンゲージメント部門EDは、 協働に関し、「レガシーについて考えるとき、未来について考える。もし子どもたちを守ることができなければ、私たちに未来はない。彼らが、私たちの未来だからだ。」と述べています。また、平昌大会組織委員会との協働においては、同委員会パブリック・エンゲージメント・チームPMのテクヒュン・キム氏が、「It’s a Penalty との協働は私たちに多くの幸せをもたらした。私にとっても人生の宝だ。」とコメントしています。(コメントはすべてIAP資料による)

本物の超一流アスリートは、自身のアクションが、社会にこういったポジティブな変化を起こすことを理解しています。普通は目を背けてしまうような、「共感されにくい複雑で難解な社会問題」にこそ、スポーツの力をより有効に活用できること、そしてそうすべきだということも。

そして先月発表した通り、東京大会での活動に、ウサイン・ボルト氏、キャシー・フリーマン氏、そしてフランソワ・ピナール氏からの協力コミットをすでに得ることができました。IAP のCEOが来日した際に実施した公開イベントやユース交流会では、有力メディアや地方紙の一面にまで報道され、参加者からも大きな関心が寄せられたプロジェクトですが、東京オリパラ大会に向けて、「IAPユースリーグ」を立ち上げ、若者を主体とした啓発活動を実施していく予定です。詳細は来月の発表となりますが、すでにフォーラムを主催する大学や若者主催イベントでの登壇をコミットいただいている専門家の方々もあり、心強い限りです。この機会に是非、世界の超一流アスリートとともに、「スポーツの力で世界を変える」を自ら体現してみませんか?

▼人身取引反対世界デーのリリース(2019年7月30日)

▼It’s a Penalty とSport For Smile の連携リリース(2019年5月)

(文:梶 川 三 枝)

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