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地球温暖化とスポーツの社会的責任 ~「よくもそんなことを」にスポーツ界はどう応えるべきか~

先月末の国連気候行動サミット登壇したスウェーデンの高校生環境活動家グレタ・トゥンベリさんの怒りの言葉が世界を騒がせてから、一か月も経たないうちに、日本は未曽有の巨大台風を経験しました。被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。

テレビでの中継は現実とは思い難いもので、河川の決壊71か所、死者86人、行方不明8人という甚大な被害をもたらしました(NHK10月25日時点)。 前日に威力低下しなければ、首都圏も1週間の停電、水害に見舞われ機能不全に陥る状況だったとも言われました。

ラグビーワールドカップも、釜石での復興の思いがかかったゲームを含む2試合が中止となり、それから数日後に、IOCがマラソンの開催地を東京から札幌に変更するとの意向を発表しました。

このような、スポーツイベントの開催そのものに関わる危機的な状況のなかで、日本スポーツ界は地球温暖化問題にどう対応したらよいのでしょうか。どう行動すべきでしょうか。

すでに地球温暖化問題への対応としての活動を実施しているスポーツチームの活動を少しご紹介します。

日本におけるプロスポーツチームの先進事例


1)横浜ビーコルセアーズによる「自然エネルギー100%ゲーム」
https://b-corsairs.com/news/other_20190401_1/
国連などでも政策提言している環境NGOであるWWFが実施している、電力を消して地球に思いを寄せる世界的キャンペーン「アースアワー」(指定日の夜1時間消灯する)のプレイベントとして、自治体、競技施設との連携により実施されたようです。本質的な環境活動を実施しているNGOと連携している点、また自治体のみならず、協賛企業も巻き込み活動を展開し、ファンに向けての啓発活動として実施している点が素晴らしいです。

2)楽天イーグルスのカーボンオフセット
https://japancredit.go.jp/cp/24/
地球温暖化への取り組みとしてCO2排出量抑制に寄与した日本はかなり珍しく先進的な活動です。欧州では、UEFA(欧州サッカー連盟)が来年のチャンピオンズリーグ(クラブチームの大陸選手権)観戦のためにファンが航空機等での移動で排出するCO2を、チケット購入時に自動計算してすべてバイアウトするという取り組みなども発表していますが、日本でもこれまでほとんど注力されてこなかったこの重要分野への取り組みが始まったことは評価に値すると思います。

世界が期待するスポーツの力

とくに地球温暖化への取り組みに限ったことではありませんが、「スポーツの社会的責任」活動として推進するうえでご認識いただきたいのは、スポーツには、「ファンを動かす力がある」ということです。それは日ごろ彼らに夢や感動を与え、感情的に心の絆でつながっているからこそなしえることで、スポーツの力を活用して社会を変える活動の源泉となるものです。

ですので、何か活動をされる際には、是非「ファンを啓発し、アクションを喚起できる」という特性を有効活用した設計をされることをお勧めします。例えば、地球温暖化へのアクションのみならず、先日の台風のような災害時への備えや心構えの啓発活動などを実施されてもよいでしょう。熱狂的なスポーツファンにとっては、好きなスポーツチームやスポーツ選手からの言葉やメッセージには大きな意味があり、心に届きます。その効果を活用するのです。これは、昨年国連が主催した地球温暖化への対策会議(*1)でも、強調された点で、世界は、その「”ファンを動かすことができる”スポーツの力」に期待しているのです。

世界でサステナビリティというと、「環境や人権に配慮した事業運営をしていますか?」という問いへの答えであり、その問いへの対応姿勢こそが社会から評価されるべきことなのですが、日本では「自社または自社産業界」の“経営的な”持続可能性という意味にすり替えられてしまうことも散見され、今後より世界との足並みを揃えたSDGsへの貢献が期待されるなかで、改善と進化が必要とされる状況であることは事実です。

しかし、さまざまな問題を抱えながらも、ラグビーW杯に続き、オリンピック・パラリンピック大会が開催される機会を有効活用し、とくにプロスポーツチームが中心となって、継続的に「ファンを動かす」ためのスポーツの社会的責任活動が今後益々「より有効な方法で」実施されるとよいと思います。

*1: 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第24回締約国会議(COP24) でのスポーツ界への期待に関するUNFCCC事務局長メッセージはこちらを参照。

(文:梶 川 三 枝)

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