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脱炭素時代の外せないSDGs~「子どもたちのため」の本気度指標~

久しぶりのコラムになりますが、この数か月間で、スポーツとサステナビリティに関する国際サミットでの登壇や、さまざまなスポーツ社会変革に関する海外セミナー等に参加した中で学んだことを書き留めておきたいと思います。

10月初旬に開催された Sport Positive Summit では、大変貴重な経験をさせていただきました。IOC(国際オリンピック委員会)とUNFCCC(国連気候変動枠組条約)が初めて共同企画する世界サミットで、グローバルスポーツ界のトップリーグやチーム、オリンピック関連スポーツ団体等が登壇し、気候変動を中心としたサステナビリティにスポーツの力をどう活用できるか、していくべきか、という議論が実践事例も交えて2日間に渡り展開されました。

”待ったなし”の気候変動問題

その内容については、また後日まとめて書きたいと思いますが、このコラムで強調したい点は、世界では気候変動(気候危機)問題への対応は議論の余地なく必須事項であり、「”それ以外に”どんな社会的責任を果たしているのか」が問われる社会になっているということです。国連とIOCが連携してイニシアチブが誕生し、気候変動・環境問題に”世界一丸”となって取り組んでいる動きについては、以前のコラムに書いた通りです。

ですので、選択と具体的行動が求められるSDGsの中で13番の「気候変動に具体的な対策を」という目標は、必然と「外してはならない目標」なのですが、日本スポーツ界ではまだこの分野での活動事例は少ないのが現状ですので、政府もようやく2050年のカーボンニュートラルを発表した昨今、これからの取り組みの拡大に期待したいところです。

希望は”努力して獲得”しなくてはならない時代

5月に開催された米国の全メジャーリーグが関わるスポーツ社会変革コミュニティのセッションでは、あるアスリート・アクティビストの言葉が印象的でした。

「You have to ‘earn’ hope in this era.」(今の時代、希望は”努力して獲得”しなくてはならない。)

その方は、13番を「SDGsの中でも別格」と強調していましたが、これまでのように「希望を”持つ”」なんて、安易に言えない状況を言い得ていると感じました。現実的に、日々のたゆまぬ努力により、気候変動を抑えなければ、希望など持てない時代だからです。

その危機感は、環境に近い海や山を舞台とするスポーツの関係者がより強く持っているように感じますが、欧米では、「夏に外で練習できない」と気候変動問題に対して行動を起こすサッカー選手等も出てきて、飛行機に乗る際、1~2時間の移動であれば、ビジネスクラスではなくエコノミークラスを使用する有名選手の行動が話題になったりもしました。CO2を排出することが、有害物質垂れ流し工場のように認識されてしまう欧米では、CO2排出量算出係数の低いエコノミークラスを選ぶことは、社会善と理解されるからです。この意識は、若者にも顕著で、NCAA(全米大学体育協会)のあるカンファレンスが主催したサステナビリティに関するフォーラムで、学生アスリートたちが真剣に、自主的に気候変動に取り組んでいる発言と行動力には驚かされました。

マーケットニーズの顕在化

世界スポーツ界がこのような顕著な行動を起こしている背景には、マーケットニーズの変化もあります。例えば、ニールセンスポーツが米国で実施した調査によると、「75%のスポーツファンが、COVID-19前と比較して、社会的責任を果たすブランドへの関心が高まった」と回答しています。また、別のリサーチでは、「89%の未来志向の消費者(米英仏中伯)は、スポーツチームに環境問題に取り組んで欲しいと思うと回答」しており、「96%の未来志向の消費者(28か国)は、スポーツには、人々の生活を変える力があると思うと回答」したという結果も出ているようです。

日本から見ていると、例えばUEFA(欧州サッカー連盟)はチャンピオンズリーグで排出するCO2(ファンが会場に行くまでの排出量総計も含む)を約5000万円を拠出してカーボンオフセットしたり、欧米スポーツ界の動きは画期的でかなりの対応をしているように感じることも多いですが、実際、現地では「ファンの期待に応えられていない」という評価だとも聞き、いかにマーケットニーズが高まっているかを理解できます。そして、この流れは、いずれ日本のマーケットにも変化をもたらすという認識で、準備を始めるのが賢明だと思います。

行動を起こすか、誰かがしくみを変えるのを待つか

国立環境研究所の江守正多先生によれば、地球環境は一度限界点を超えると二度と元には戻らず、「今ならまだ間に合う」のだそうです。そして、何割かのリーダーが行動を起こし社会システムを変えれば、残りの人は従わざるを得ない状況になる(例えばレジ袋の有料化など)とも示唆されていますが、この言葉を聞いて、「自分がそのリーダーになろう」と思えるかどうか、が重要だと思います。世界には、コロナ禍でなくとも、戦争や飢餓、病気など様々な困難に直面し、日常生活さえ大変な人々がいますから、彼らに代わってという意味でも、まずは一般的な日常生活を送ることができている私たちには個人として行動する意義があり、さらにスポーツという社会性の高い(ファンの行動変容を促すことができる力を持つ)事業に携わっているスポーツ界は、国連も期待するその「特別な力」を活用する社会的責任があると思います。

先日の Sport Positive Summit 登壇後、世界からさまざまな取材依頼や打診を受けましたが、世界は日本スポーツ界の行動に期待しています。地球規模課題に”世界一丸”となって取り組む「世界代表チーム」に、日本スポーツ界からも是非参画頂けたらと思います。

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