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世界スポーツ界のCOVID-19対応 ~混沌と不安の中で~

新型コロナウイルスによる未曽有の危機の中、東京オリンピック・パラリンピック大会が延期となり、新年度もはや一か月が過ぎました。日本ではまだ厳しい状況が続いていますが、一日も早く収束することを祈りつつ、世界のプロスポーツ界がこの状況下で実施している活動について、印象的だったものをご紹介できればと思います。

選手の発信等も含め、本当に多くの様々な活動やプログラムが献身的に実施されているのは皆さんもご存知かと思いますが、最も印象的だったのは、NBA(米国プロバスケットボールリーグ)が立ち上げたイニシアチブ「NBA Together」でした。

早いタイミングでファンにビジョンを示す

まずリーグとして、対応や支援の枠組みをいち早く発表したという点が素晴らしいと思います。今回の新型コロナウイルスの影響は、前代未聞の事態ということに加え、変化のスピードが速く、すべてのアクションが正解のない試みだった中で、NBAは、3月11日のシーズン中止発表後わずか10日足らずで、米国メジャープロスポーツリーグの中で最初にリーグ主導のCOVID-19対応イニシアチブを発表しました。

このタイミング、つまり、「どれだけ早く、不安に陥っているファンやコミュニティを元気づけることができるか」は、プロスポーツとして重要な要素のひとつだと思います。MLS(米国プロサッカーリーグ)も、NBAの10日後の3月30日には「MLS Unites」というイニシアチブを立ち上げていますが、このように、リーグがイニシアチブをとって、「ビジョン」を示し、体系的なプログラムとして発表することで、ファンやコミュニティは、自分たちが向かうべき方向性について理解し、落ち着きを取り戻すことができたでしょう。

ファンとコミュニティのニーズに的確に応える

ただ、もちろん迅速な対応のみならず、実施事項の中身も重要です。「NBA Together」は、コミュニティのニーズに的確に対応した包括的なプログラムがわかりやすく導入実施される「しくみ」になっていて、具体的には、下記の4つのプロジェクトラインで構成されています。

1)Know the Facts (ウイルスの特性と対応策について知識を共有する)

2)Acts of Caring (影響を受けた人々に対する寄付・支援活動)

3)Expand Your Community (在宅でのバスケクリニック提供や孤立しないための対策)

4)NBA Together Live (在宅推奨のための過去のNBA映像を無料配信)

災害の被災者支援などの場合は、2の支援活動に重きが置かれることが多く、またスポーツチームとしては3)や4)は比較的容易にできることだと思いますが、とくに今回の新型コロナウイルスに関しては、社会的にまず重要なのは1)であり、「感染しない、させない」ための情報共有と行動喚起のためのメッセージを含め、しかも最初にもってきているところが素晴らしいと感じました。

普段からの実践が「いざという時」に役立つ

実際にウイルスの情報アップデートページには、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)やWHO(国際保健機関)の公式サイトへのリンクや手洗い・感染予防に関するガイダンスがわかりやすく掲載されています。おそらくこのような情報がプロスポーツチームの公式サイト内に掲載されることは先例としてなかったことですが、「必要だからやる」と即断し実行できたのは、これまで「NBA Cares(NBAケアーズ)」という社会的責任プログラムを10年以上実施し、普段からファンやコミュニティの社会的ニーズを理解し、実践してきたからこそではないかと考えます。実際、チームの中には、そのような情報掲載をチームの公式サイトでも発信しているところもあり、社会的責任へのコミットが感じられます。

また、WHOとの連携では、PSA(公共広告)に日本人選手として初めて上位ドラフト入りしたワシントン・ウィザーズの八村選手も協力し、話題になりましたが、プロスポーツの持つ知名度を有効活用した事例です。もちろん寄付も大切で、リーグと選手会の共同コミットの他、NBAのほとんどのチームが、アリーナの非正規雇用者の直接支援を迅速に発表していたことは印象的でした。彼らを自分たちの事業を支える大切な仲間として認識し、手を差し伸べることを忘れないプロ意識と思いやりに、心から感銘を受けました。

「いざという時」にどれだけ迅速に社会からの期待に応え必要な対応ができるかは、プロスポーツチームの存在意義にも大きく関わる要素だと思いますが、海外スポーツ界はもちろん、日本スポーツ界でもこれまでになかったような規模で、様々な素晴らしい活動や呼びかけが実施されるようになり、大変よい変化だと思います。

医療の最前線で命がけで対応にあたってくださっている医療従事者の方々に心から感謝しつつ、スポーツの力を最大限に活用し、力を合わせてこの難局を乗り切ることができるよう、祈るばかりです。

<参考リンク>

※ NBA Together: https://cares.nba.com/nbatogether/

※ NBA Cares: https://cares.nba.com/

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